9c92d339.jpg 『自由貿易を推進するアメリカでなぜTPP懐疑論が出るのか』(Yahoo)という記事を読んで、TPPの付いての理解が初めて深まりました!!
 有難うございます。

 書かれたのは西山隆行(にしやま・たかゆき) 成蹊大学教授という方です。

 ほぼ全文抜粋ですが、紹介します。

 アジア方式とスパゲティ・ボウル現象
 先進国が実現しようとしてきた自由貿易協定は、野放図な自由化を目指すものではありません。経済的利益を追求するために諸々の知的財産権を無視したり、環境を悪化させたり、労働者を搾取したりするのは望ましくないという考え方も同時に提起されていて、知的財産権や地球環境の保護、労働基準の共通化などを実現するためのルール作りも試みられてきました。

 従来APEC諸国が取ってきた方針は、各国の自主的な取り組みを基礎として、合意可能な範囲でルールを決めていこうというものでした。各国の自主性と自発性を重んじて法的拘束力を課すことのないその方式は、しばしば「アジア方式」と呼ばれましたが、これでは貿易自由化が進展しないばかりか、環境規制や労働規制も進みません。TPPは、このような状態を脱し、契約に基づいた、秩序ある貿易自由化を目指そうとしたものなのです。

 今日、様々な国が多数の二国間自由貿易協定(FTA)を結んでいますが、これは、様々な部品の関税率などについてそれぞれが異なるルールを備えていることを意味します。このような状態は、ボウルの中でスパゲティが絡み合っているのと同じようにFTAのルールが絡み合って複雑化していることから「スパゲティ・ボウル現象」と呼ばれています。

 TPP交渉が始まると、オーストラリアやシンガポール、日本は「共通譲許」の実現に向けて尽力しました。

 共通譲許方式とは、交渉によって定められた自由化方式に沿って各国が対象品目を定め、多国間協定を締結したどの国から輸入される場合でも、自国の譲許表に沿った同じ税率を適用しようとする方式のことです。

 しかし、驚くべきことに、もともと共通譲許設定を提唱していたアメリカが、交渉の途中から、共通譲許を作るのではなく、二国間協定の積み重ねによるTPP実現を主張したのです。もちろん、ルールの共通化もある程度は実現しましたが、最終的にTPPは、従来の二国間協定によって作られたスパゲティ・ボウルに、不足していた二国間協定を足し合わせるものとなったことも否めません。つまり、スパゲティ・ボウル現象は解消されなかったのです。

 つまり、オバマ政権は貿易協定締結という業績の達成を目指し、共通譲許設定という目的を早々に断念したのでした。オバマ政権はオバマ・ケアに関しても、もともと主張していたパブリック・オプションを早々に断念して民間医療保険をもとにした医療保険制度改革を行いました。崇高な目的を掲げるものの、実際には早々に立場を変更して、当初の目的とは大きく異なるものを作り上げるのがオバマ政権の特徴なのかもしれません。