715b0c34.JPG この石橋を初めて見た人は一様に驚くと思う。
何で川の上にかかった石橋が、噴水のように水を吐くのだろうか?
俄かには理解できないと同時に、非常に美しい建造物でもあり、印象に残る石橋である。

しかもこの橋は1854年に、個人的な事業として行われたというのであるから、この橋を造った布田保之助(ふたやすのすけ)という人はすごい人であったと思う。また石で水を通す管を造って橋を渡らせたという技術者(石工)の丈八(じょうはち)という人の高度な技術にも感嘆する。しかも目的は、荒地で作物も出来ない台地に水を引く事により、貧農の生活を楽にさせたいという気持ちから、このような大土木事業が行われたというから泣けてくる。



通潤橋220070816通潤橋420070816通潤橋520070816
人吉からは、九州自動車道にのり、松橋(まつばせ)インターチェンジでおり、国道218号線にはいる。熊本県上益城郡山都町(旧矢部町)までは概ね90km余である。
この町は、日本柔道の山下泰裕の故郷でもある。それほど柔道に詳しくない私でも1984年のロサンゼルスオリンピック無差別級決勝、エジプトのラシュワンとの一戦もまた奇跡として記憶に残る。

私は1987年ごろと、2007年にこの通潤橋を見に出掛けた。橋が渡された五老ヶ滝川には大きな魚が悠々と泳いでいる。しかも周りは田んぼで、天気の良い日など非常に長閑である。
駐車場から2〜300メートルも歩けば通潤橋の真下まで来る。高さ21mの橋には、横から登れるようになっており、橋の上は幅6m強の少し中央がくぼんだ形のアーチ状になっている。少し怖いが、欄干は無い。真夏の暑いときでも、この谷を通り抜ける風が適度な湿気とともに爽やかである。
橋を渡ると藁葺き屋根の建物の近くに、取水口が小さな池になっている。と耳を澄ませば、五老ヶ滝の水音が聞こえてくる。

熊本には熊本城の「武者返り」と呼ばれる石造りの城壁など、石工の技術は高いものがあったそうである。肥後の石工は歴史的にも有名な技術者集団であるそうだ・・・
・・・また夜になると焼酎片手に、私の知る由も無い古き良き先人の偉業に思いを馳せるのであった。