3a9d1e3f.JPG とうとう今回の九州旅行も最後の日を迎えた。
 2日連続の釣行の疲れ、昨夜の郷土料理で彩られた饗宴の翌朝である。きっと9時ごろまでは目が覚めないだろうと予想して、朝食の時間は最も遅い9時からのスタートを予約しておいた。
 しかし流石に(午後)10時過ぎに床に着けば、7時ごろには目が覚めてしまった。
 朝日に輝く窓の外を眺めてみる。・・・熊本、人吉辺りは、東京に比べると経度で10度ぐらい違う。また人吉は山間の盆地である。その分、周りの山からお日様が顔を出すのには、東京よりも遅くなる。・・・経度だけでも約40分、人吉の夜明けは東京よりも遅いという事になる。
 窓の外を眺めると、驚いたことに、霧、朝霧、朝靄(もや)といった状態で、目の前の球磨川の水面でさえはっきりとは見えない。しかしその朝靄に日が差すと、乱反射して、結構まぶしいような明るさになる。
 誰も起きようともしない。しかしだからといって私が音量をだしてテレビを見るのも気が引けたため、しばし布団に横たわっていた。
 10分ほどすると、一人が目を覚ました。
 そこで私は、昨夜はこの旅館の温泉には感動したが、3階の大浴場しか行っていなかった。ありがちな提案ではあるが、他のお風呂に行こうと誘った。

 地下のレトロな浴場に行った。ここは先代の経営者が造られたお風呂だそうで、浴室に入って気がついたが、全面が大理石やコンクリートのような石室であった。一瞬、ロマネスクとかゴシックといった建築様式的かと思ったが、ずっとシンプルな感じの石室である。しかも浴室に立った自分の目線よりも、地面のほうが大分上である。外を眺めるには、少し見上げないと見ることが出来ない。・・・そこにこの浴室の意外性があり、主張を感じた。
 この浴室には、妙に清潔で無機的な感じを持つのではあるが、しかし幼少の頃より、しばしば人吉近辺の温泉、浴場を訪れることがあった私には、何処か懐かしさを感じる。親戚のおじさん、おばさんに連れられてきた時の、漠然とした暖かさ。人吉温泉の古き良き面影を感じた。しかも泉質は前回申し上げたとおり、非常に心地よい温度と質感である。
 しばし石の浴室で、目をつぶってぼんやりと湯船に浮かびながら、今回の短い九州旅行を想起した。好天に恵まれ飛行機や船や車といった交通機関でも、何の問題も無く、時間的にはややタイトなスケジュールではあったが、どうにか予定を全うできた事に安堵すると同時に、このように導いてくれた見えざるものに感謝したい気持ちになった。・・・勿論、釣果にも恵まれた・・・
 次は、1階の露天風呂である。大きな岩がごつごつとした露天風呂、その外側に何があるかは見通せない。しかし隣りが、女風呂であるという事は、容易に想像ができた。

 程なく、1階の食堂での朝食の時間である。
 流石、温泉旅館!・・・我々の普段の朝食は、パンとコーヒー、それにサラダがあるかないか・・・もしくは朝食の時間すら短縮して、通勤に出て行ったりもする。・・・朝から固形燃料を2つも使っての食事である。一つは、この温泉の水を使って作った豆腐、湯豆腐料理・・・しかもこれは最初は透明なお湯であるが時間が経つと、豆腐が溶けてきて白濁する。少しミルクのような感じのする今まで食べたことの無い豆腐!といった感じである。またもう一つは、中ぐらいのサイズの鮎の開きの一夜干しである。・・・これまた、私は結構鮎料理は食べてきたつもりであったが、初めて食べる代物であった。
 その他、からしレンコンや温泉のお湯を使った温泉卵、漬物など盛りだくさんである。
 そういえば昨夜も、温泉水を球状にして凍らせた氷で焼酎を飲んだ・・・確かに入って気持ちの良い温泉のお湯ではあったが、いろいろな機会に結構飲んだり食べたりしてしまった。
 メタボは勿論気にしているが、2膳も食べてしまった。